シードル博物館。ナバ。アストゥリアス州

アストゥリアスのシードル文化

アストゥリアス州

アストゥリアス州の代表的な飲み物、シードルの製造プロセスおよび消費を軸とする「シードル文化」は、2024年にユネスコの無形文化遺産に登録されました。「シードルがなぜ、これほど愛される飲み物なのかを知りたい」「シードルを適切に注ぐ方法を身に着けたい」「そして何より、シードルを堪能したい」とお考えなら、スペイン北部にあるこの地域への訪問を計画するだけで十分です。「自然の楽園」と呼ばれるアストゥリアスを訪れれば、シードル文化が飲酒を超えたものであることがわかります。それは儀式であり、この土地の伝統と結びついた社会的習慣です。 

シードル地域

シードル醸造所(シードルが作られる場所)とリンゴ園(リンゴ農園)の大部分は、いわゆる「シードル地域」にあります。シードル地域は、アストゥリアス州に属する、ビジャビシオサ、コルンガ、ナバ、ビメネス、カブラネスおよびサリエゴの各自治体で形成されています。シードルのルートは、この地域を案内し、その文化的重要性を理解するための理想的な提案です。ナバにあるシードル博物館も、その歴史と秘密に近づくのに欠かせない場所です。この飲み物の主成分である果物、リンゴの栽培から、その国際性(シードルは50か国を超える国に輸出されています)まで、幅広く学ぶことができます。アストゥリアスには約500種類のリンゴがありますが、シードルの製造に使用されるのはそのうちの76種類だけだということをご存知ですか?オビエド市からわずか30キロメートルに位置する、同じナバの村では、毎年7月に天然シードル祭りが開催されます。展示会やコンサート、演劇、テイスティングが行われるほか、このイベントはシードルの注ぎ方を競う愉快な国際コンテストで最高潮に達します。なぜなら、シードルを「エスカンシアールする」、つまり「注ぐ」ことが、スキルを必要とする立派な儀式であるからです。

シードル博物館ナバアストゥリアス州

シードルを注ぐための熟練の技

 「エスカンシアールする」ことも、シードル文化のまた別の柱です。そのためには、まず、背中をまっすぐにして楽な姿勢を取ることをお勧めします。次に、片手でボトルの底を持ち、もう一方の手でグラスを持ちます。最後に、ボトルを持ったほうの腕を頭上まで上げて、ボトルを少しずつ傾けていきます。その際、重量をコントロールするとともに、シードルがグラスの中に落ちるようにします。伝統的に一気飲みが理想とされているため、グラスを満杯にする必要はありません。挑戦してみませんか。毎年記録更新を目指す人気のイベントにあえて参加してみませんか。このイベントでは、8月の最終週にポニエンテ・ビーチで開催されるヒホンのシードル祭りの一環として、数千人の人々が同時にシードルを注ぎます。シードルには別の特長もあります。それは、アストゥリアス・グルメの名物料理と完璧に調和すること、そして、対照的な風味に味覚を適応させる能力をもっていることです。そうした対照的な風味には、シーフード、魚、ファバーダ、米、そしてこの地域の濃厚なチーズがあります。

ヒホンのシードル祭り

保護原産地呼称シドラ・デ・アストゥリアス

2002年以来、保護原産地呼称シドラ・デ・アストゥリアス は、リンゴがアストゥリアス産であることを証明し、最終製品の品質を保証するための品質管理を実施します。シードルにはいろいろな種類があります。シードル専門店で消費され、また注がれる天然シードルが、もっとも人気です。天然スパークリングシードルは、二次発酵が行われるシードルであり、砂糖はほとんどまたはまったく添加されていません。3番目のタイプは濾過された天然シードル、通称「テーブルシードル」です。これはワインのボトルのようなボトルに入っており、注ぐ必要がないため、どのレストランでも提供できます。そして最後は、リンゴを凍らせたオリジナルのアイスシードルです。食前酒として、または甘すぎないデザートにぴったりの洗練されたドリンクです。

アストゥリアス州ナバのリンゴ園

シードル醸造所見学というエクスペリエンス

アストゥリアスには70か所を超えるシードル醸造所があり、州全域に散らばっています。次のエクスペリエンスをおすすめします。その一部を訪れて、この職人技による生産プロセスの計り知れない価値を理解してください。10月から11月のリンゴの収穫期は、醸造所を見学するのに適した時期です。通常、訪問にはチーズや典型的製品のテイスティングが組み合わされます。また、一部のシードル醸造所では「エスピッチャ」を体験できます。「エスピッチャ」とは形式ばらない食事のことで、スパニッシュオムレツ、ロースハム、エンパナーダ、チョリソといった品を主体としたものです。この大衆的な社交形式の起源は、春に、シードルを保管している栗樽から直接、初物のシードルを味わっていた時代にさかのぼります。

エル・ガイテロ・サイダー・プレス。ビリャビシオサ。アストゥリアス州